top of page

T X T A

Tomoya Nishimura X Tomoki Shoda Architects

Foodscape フードスケープ

図解 食がつくる建築と風景

普段私たちが口にする食は一体どこからきているのだろうか。商品の棚に包装されて大量に並べられる食のラベルを見ると生産地や生産者の名が書かれていることがあるが、そこから先へと食の辿ってきた生産の背景を想像することは難しい。

 

20世紀の産業革命により人々は工場で働くために都市部へと移動したことで、暮らしから食の生産は分断されてしまった。食は自給自足でつくるものから、購入するものへと変わっていく。世界大戦後には、大量生産のためのトラクターや農薬、遺伝子組み換えなどの技術革新が次々に進められていった。こうした人々の暮らしの変化や食の産業化は、私たちに安定した食糧を効率的に届けてくれる。しかし商品の棚からは、食の生産ととともにあった人々の暮らしや地形、地質、気候がはぐくむ農作物や加工物の風景を想像することはできない。

 

イタリアへ行き、彼らと食事をするとその食事の長さに驚かされる。3時間以上かけて夕食をとったこともあった。そんな長い時間の中で食の話は欠かせない。夕食に出てくる料理から始まり、地元のパスタやチーズ、ワインの味や形の違いそして作り方までを誇らしげに語るのである。その時間と会話をとても豊かなものだと感じた。彼らはそこにある食の味や匂い、形を語るとともに、その美味しさがつくられた背景を知り、語ることができるからだ。

 

イタリアの食の生産現場に訪れると、さんさんと降り注ぐ太陽の下で育てられるレモンを支えるパーゴラや、冷気からぶどうを守る象徴的なパーゴラの石柱、眼鏡が曇るほどの湿度の中で生ハムにカビを生やすための発酵・熟成室といった、美味しい食の背景には建築が関わっていることに気づいた。そこには普段目にする建築とは少し違う、食の生産ならではの建築の形や素材の使われ方があった。それは、人のためだけの建築ではなく、自然を活かしながら食をつくるための建築である。さらに、パーゴラや発酵・熟成室などの建築は生産者によって少しずつ形や材料が異なるが、同じような方法で地域の中に反復し、風景をつくる。人々が試行錯誤を繰り返し、時間をかけて自然との関係の中でつくりだした知恵が建築という形になってあらわれ、地域の中で広がり、人々の暮らしを支えてきたのである。こうした自然を活かす建築を起点にすることで、食の風景を考えることができるのではないだろうか。

 

そう考え、イタリアと日本の食の生産現場で調査を行った。ここに集められたのは、季節や時間の中で変化する自然とともに生産されるワイン、レモン、塩、日本酒などの食がつく る建築と風景である。本書ではそうした食がつくる建築と風景をフードスケープと呼ぶ。

著 者:正田 智樹

体 裁:A5横判・224頁(オールカラー)

定 価:本体3000円+税

発行日:2023-10-10

装 丁:UMA design farm(原田祐馬・山副佳祐)

ISBN:9784761528683 GCODE:2329

bottom of page